退職は3ヶ月以上前に申し出ないと違約金15万円!? フィットネススパ「スイート・ピア」に改善を求めています

この度、フィットネススパ「スイート・ピア」で働くエステティシャンのAさん(20代前半)がエステ・ユニオンに加入し、会社との団体交渉をスタートしました。
スイート・ピアは、フィットネスクラブ専門のエステティックサロンで、関東地方で69店舗(2016年12月現在)を展開しています。

◆スイート・ピアでの労働問題
Aさんは美容の専門学校を卒業後、最初に就職した大手エステ企業は労働環境が悪かったため、数カ月で退職しました。
その後、充実した研修制度や給与・待遇の良さを謳うスイート・ピアの求人をインターネットで見つけ、ここなら労働環境が良さそうだと思って入社しました。けれども実際に働き始めると、以下のような労働問題があることが分かりました。

・残業代不払い
早出、休憩中の業務、残業、練習に対する時間外労働手当が支払われませんでした。

・休憩が1時間取れない
片付けや準備のために休憩時間が削られ、1時間の休憩を取ることができませんでした。

・労働時間が適正に把握されていない
朝は着替えと準備作業(30~40分程度)をした後に、退勤時は閉店後の片付けをしている途中で、他の従業員が全員分のタイムカードを打刻(PC入力)していました。

・求人詐欺
求人の募集要項では、給与の内訳が記載されていなかったのに、入社後、給与の中に固定残業代が含まれると説明されました。

・「退職ルール」と違約金
スイート・ピアでは、「退職を希望する3ヶ月以上前に退職の申請を行い、(中略)退職日を確定させるものとする」という「退職ルール」があり、これに違反した従業員は研修時の消耗品代15万円を支払うこととされています。
Aさんは、入社初日に契約書を渡されて初めてこのルールを知りましたが、その時点で就職活動をやり直すのは負担が大きく、また、この会社で頑張っていきたいと考えていたこともあり、仕方なく契約書にサインをしました。けれどもその後、違法な労働実態が次々と分かり、さらには体調不良に陥ったため、3ヶ月を待たずに退職したいと申し出ました。それに対して会社側は、退職ルールを破ることになるので消耗品代15万円を払うようにとAさんに通知してきました。
以上のように、好条件の求人で求職者を集めて、実際には違法な労働環境下で働かせ、かつ、すぐに辞めようとする従業員には違約金を請求するなど、スイート・ピアのやり口はかなり悪質であると考えます。

◆会社に求めていること
3月末、Aさんとエステ・ユニオンは、未払い賃金の支払いや労働環境の改善を求めて会社に対して団体交渉を申し入れました。

・未払い残業代の支払い
早出、休憩中の業務、残業、練習に対する時間外労働手当の支払いを求めています。

・労働時間の適正な把握
実際の出退勤時間ではないタイミングで全員のタイムカードを一斉打刻するという方法では、実労働時間を会社が正確に把握することができず、従業員の健康管理や長時間労働の抑制を行うことができません。また当然ながら、従業員の実際の時間外労働に対する残業代を計算して支払うこともできません。
私たちは会社に対して、厚生労働省のガイドラインに沿った、労働時間の適正な把握を求めています。

・適正な求人表記への修正
固定残業代を隠して求職者を集める「求人詐欺」によって被害を受ける人がこれ以上出ないように、求人を適正な表記にするように求めています。

・消耗品代15万円の支払い合意が無効であることの確認
Aさんが入社時にした支払い合意は、労働基準法16条(賠償予定の禁止)に反し無効であると考えられるため、会社に対して確認を求めています。
スイート・ピアのように、エステや美容業界においては退職に伴う違約金(研修費の支払いなど)を定めている会社が多く見受けられますが、それらは基本的に労基法16条に反しており、違法であると考えられます。

◆1回目の団体交渉の報告
先日、会社との1回目の団体交渉を行い、Aさんから現場の労働実態について説明をし、会社に対して改善を訴えました。
会社は未払い賃金が発生していること自体は認め、支払う意向であることが確認できました。また、今後はタイムカード打刻のルールを社内で統一することを検討していることや、求人については表記を適正に改めていく方向であることを確認できました。これらについては一歩前進です。

一方で、Aさんの実労働時間がタイムカードの記録以外にもあるかどうかについては、会社が現場の実態を把握できておらず、今後の調査によることになりそうです。早出や残業がどれくらいあったのか、休憩時間中に業務をしていたかどうか、練習は会社の指示のもと(=労働として)行っていたのかが争点になっています。
そもそも、会社の不適切な労働時間管理が原因であるので、会社には誠実に調査を行っていただきたいと思います。

また、消耗品代15万円の支払い合意については、会社は違法ではないと主張し、合意が有効であるという立場を変えませんでした。今回Aさんが申し出から3ヶ月以内に退職するということに対して、相変わらず15万円を支払うようにと言っているのです。
これまで多くの従業員に対して違法な労働環境を強い、さらには退職の自由を縛ってきた会社は、すぐにでも自分たちの非を認めるべきでしょう。

エステ・ユニオンは、会社が違法性を認め、しっかりと改善を進めていくように、今後も話し合いを続けていきたいと思います。これからの動きにもぜひご注目ください。

◆スイート・ピアで働くみなさまへ
みなさんのサロンでは、上記のような問題はありませんか? 違法な働き方は改善できます。少しでも「おかしい」と思うことがありましたら、お気軽にエステ・ユニオンにお問い合わせください。相談は無料、秘密は厳守します。