この度、エステティックTBC(TBCグループ株式会社)とエステ・ユニオン(総合サポートユニオンエステ支部)は、「ホワイト求人労働協約」(就活安心労働協約)という日本初の求人に関する包括的労働協約を締結しました。この協約は、求人に関する情報公開を会社が積極的に行うこと、労働契約は求人を下回らないことなどを約束することによって、求職者が安心して就職できるようにすることを目的としています。
本日、エステティックTBCとエステ・ユニオンは、厚生労働省にて共同記者会見を行い、労働協約の締結とその内容について発表しました。
◆「ホワイト求人労働協約」(就活安心労働協約)の意義
①社会問題化する「求人詐欺・ブラック求人」問題
求人情報では魅力的な条件を掲げて労働者を集めながら、入社前後になって実は給料の中に「固定残業代」が含まれている、実際の労働環境が求人情報と異なり劣悪であることなどが判明する、「詐欺求人・ブラック求人」が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査によると、ハローワークの求人票に記載された内容と実際の労働条件が異なっていたという相談は1万2252件にもおよび(2014年度)、求職者にとって安心して就職活動をすることができない実態が浮き彫りになりました。
②厚生労働省(国)による規制強化の動き
そのような中で、厚生労働省は、若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)の公布(2015年9月18日)を受け、2015年9月30日、「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」を告示し、「募集段階からの固定残業代の明示」を義務付けました。また、2016年6月3日、厚生労働省の有識者検討会は、公共職業安定所(ハローワーク)や民間の職業紹介事業者に労働条件を偽った求人を出した企業と幹部に対し、懲役刑を含む罰則を設けることも検討された報告書をまとめています(「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会報告書」)。
③日本初、求人関連の包括的労働協約〜本労働協約の画期性〜
ところが、各媒体において掲載されている様々な企業の求人情報を見ると、義務化されたにもかかわらず、固定残業代の明示は徹底されていません。罰則規定もなく、強制力がないためです。また、仮に罰則があったとしても、サービス残業や長時間労働などの労働基準法違反が横行していることからも分かる通り、すべての違反企業を取り締まることには限界があります。
エステ業界では、特に新興エステティック企業において、求人詐欺問題は深刻です。私たちエステ・ユニオンが大手エステティックサロンの求人情報を調査したところ、一部の例外を除き、多数の企業において固定残業代の表示義務に反した表示となっていることが確認されました。高い給与を表示しながら、実際にはその中には時間外手当が含まれており、かつ、そのことが分かる表記になっていない求人が乱立しているのです。
そうした状況の中、エステティックTBCとエステ・ユニオンは、エステ業界で働くことを希望する求職者が、安心して就職・転職活動ができる環境を整備するために、業界全体で何が出来るのかを考え、労使間で協議してきました。そして、エステティックTBCは業界のリーディングカンパニーとして率先して情報公開等を行うべきであるとの認識に立ち、「ホワイト求人労働協約」(就活安心労働協約)を締結するに至りました。
労働協約の概要はこちらです。(PDFファイル)
【本協約のポイント】
ホワイト求人労働協約ポイント.pdf
①「職場環境の情報公開」を約束
若者雇用促進法及び女性活躍推進法が求める情報公開項目全てをまとめて各求人媒体へ主体的に公開することにより、求職者が企業の就労実態に関わる情報の多くを取得できるようにします。また、各事業場における36協定(残業時間の上限を定めた協定)に関しても公開することを予定しており、それによって、求職者は各事業場での残業時間の上限が把握でき、長時間労働の危険性がないことを事前に確認することができます。
②「求人条件表示の明確化・共通化」を約束
厚労省指針が義務付ける固定残業代制度の明示項目を、新卒採用求人だけではなく、義務化されていない中途採用求人含め、各求人媒体にて明示します(正確には、青少年・非青少年)。それによって、求人段階での給与の水増し表示を防止します。また、民間求人、ハローワーク求人、自社HP求人によって求人情報に齟齬が生じないよう、各求人媒体における文言の共通化を行うことで、求職者が正確な求人情報を把握できるようにします。
③「求人情報以下の労働契約締結の禁止」を約束
求人情報を見て応募し内定を得て、実際に入社するまでの間に後出しで労働条件が下方修正されるという被害を防ぐため、各求人媒体において求人情報以下の労働契約を締結しない旨の文言を掲載するとともに、内定時に労働条件通知書を書面交付することにより、その実効性を担保します。
以上のような、①「職場環境の情報公開」、②「求人条件表示の明確化・共通化」、③「求人情報以下の労働契約締結の禁止」の3つにより、エステ業界で働くことを希望する求職者が、安心して就職・転職活動を行い、入社できる環境を労使で協議し、整備しました。
今回のような労働協約締結は、日本社会において初の先進的な取り組みです。エステ・ユニオンは、同業他社にも本協約の締結または本協約内容の履行を求める公開質問状の送付を予定しており、エステ業界から「求人詐欺・ブラック求人」をなくすための取り組みを進めていきます。