X社は、渋谷・恵比寿・表参道・新宿に店舗をかまえる、まつげエクステサロンです。X社には芸能人なども通っており、まつげエクステ業界では有名な企業です。最近では、私たちエステ・ユニオンへは、エステティックだけでなく、まつげエクステ、ネイルなど、広く美容業界からの相談が寄せられています。
◆Aさんが抱えていた労働問題
Aさんの労働環境には数多くの違法・不当な問題がありました。
(1)労働条件通知書が渡されない
会社は、入社時に労働条件通知書をAさんへ書面で交付していませんでした。労働基準法では、書面で交付しなければなりません。
(2)就業規則が周知されていない
会社は、各サロンへ就業規則を設置しておらず、就業規則を周知していませんでした。労働基準法では、就業規則は周知義務があります。
(3)労働条件の一方的引き下げ
Aさんは、今年の春に一方的に賃金等の引き下げをされました。それに対して、Aさんは不同意書も送付していますが、会社には無視されてしまいました。法律では、労働条件の引き下げは、本人の同意がなければ原則としてできません。
(4)健康診断の未実施
法律上、入社時及びその後の定期健康診断は義務ですが、会社は行っていませんでした。
(5)社会保険未加入
Aさんが訴えるまで、加入の条件を満たしていた人も社会保険未加入の状況にありました。また、その後、社会保険に加入し保険料を払うようになっても、Aさんへ健康保険証を渡さないなどの嫌がらせを会社は行ってきました。
(6)労働時間の問題
①サロンの残業時間の上限を決める協定である、36協定を適切に締結していませんでした。
②タイムカードの打刻以外に、研修、ミーティング、技術テストなどを行っていましたが、労働時間としてカウントされていませんでした。
(7)賃金の未払い
①早出、残業等に対して1分単位で計算して賃金が適切に払われていませんでした。
②残業代は30分単位計算で500円しか払われないという状況がありました。
③親睦会費が労使協定のないままに、天引きされていました。
④会計間違い、在庫商品のズレなどに対して罰金制度がありました。
(8)研修費の罰金
入社時の「誓約書」には、技術専門学校での研修など存在していないにもかかわらず(実際には職場の上司から指導を受けるだけ)、「入社後1年間は退職せず、1年以内に退職する場合は、学費21万円に相当する金額を貴社に支払います」と約束させられていました。そのような契約は、労働基準法上の「賠償予定の禁止」に該当し、無効です。
(9)有給休暇が取れない
有給申請をしたところ、最終的には社長から拒否され、結局取れませんでした。労働基準法では、有給休暇は自由取得が原則です。
(10)不当解雇
Aさんは、上記のような問題について指摘をしていたところ、会社から労働条件の一方的な引き下げを承諾しないならば来なくていいと言われてしまい、不当解雇されてしまいました。
◆ユニオンに加入したAさんの想い
ユニオンに加入する一年前から、労働問題について会社に訴えかけていましたが、X社では法律は無視し全てが社長のマイルールでした。第三者への口止めをされ不利な状況で訴え続けた末、不当解雇に合い、どうしようもなくなった時にユニオンへ相談することを決めました。現在はユニオンと一緒に話し合いが進んでいますが、少しずつ会社が間違っていることを認め始めて来ました。個人では言いくるめられてしまった事も、ユニオンの力で良い方向へ向かっていますが、まだ会社が認めない部分もあるので最後まで気を抜かずに解決していきたいと思っております。
◆X社で働くみなさまへ
Aさんと同様の状況で悩んでいる方はいませんか?少しでも働いていて「おかしいな」と感じるところがありましたら、ご相談や情報提供をいただけましたら幸いです。在職中に改善することはもちろん、在職中から証拠の集め方などを相談しておいて、退職の際や退職後に会社に対して請求することも可能です。違法な環境は改善できます。ちょっとした疑問から相談をお受けしていますので、ご検討ください。