エステ業界に蔓延するノルマ・自腹購入とエステ・ユニオンの取り組み

朝日新聞(10/10)「エステ業界、「数字」の重圧 「ノルマ」月700万円に疲れ果て」にて、エステ業界に蔓延するノルマと自腹購入の問題が取り上げられました。
記事では、「たかの友梨ビューティクリニック」、「TBC」、仙台市のエステ会社、茨城県内のエステ会社など4社の事例が紹介されています。こうしたノルマ達成の重圧に関する相談は、私たちエステ・ユニオンにも多くのエステ会社から寄せられています。
今回は朝日新聞の記事を紹介し、さらにこうしたエステ業界の体質を変えるためのエステ・ユニオンの取り組みについてもご紹介します。
(引用開始)
一見華やかにみえるエステ業界で、働いている女性たちから「告発」が相次いでいる。長時間労働や残業代未払い、パワハラといった問題を抱える職場に共通するのは、高い売り上げ目標の存在だ。ノルマ達成の圧力のなかで、多額の「自腹営業」をせざるを得ない人もいる。
いつも「数字」に追われていた。最近まで、「たかの友梨ビューティクリニック」で働いていた20代女性は、今も月末になると、あの頃の焦燥感を思い出す。
施術の回数券などを売る契約業務を担当し、客の肌や体の相談にのり、基礎化粧品や栄養剤を販売した。「とにかく数字」の現場で、月700万円のノルマを課されたこともある。
月末の最終日には、数時間ごとに売上額を更新した紙が休憩室に貼られる。店長が上司に電話で怒られ、泣くこともあった。
ノルマ達成のため、さりげなく客に売り込んだ。施術の終わった客に「もう少し体をほぐしてもいいですか?」と持ちかけ、マッサージ器のような道具でほぐす。「それ、なに?」と客が関心を示したら、「自宅で使うと効果が高いんですよ」と手渡す。値段は、聞かれるまで言わない。
売り上げ目標に届かないことも多かった。上司からやんわりと「協力」をうながされる。女性は断りきれず、25万円の美顔器やマッサージ器具、栄養剤やパックなどを自腹で購入した。
社長が手がけるジュエリーの販売会もあった。売れ行きが悪いと「あなたも見ておいで」と店長。「似合うわね」と購入を勧められ、ダイヤの30万円の指輪や13万円のネックレスなどを社員価格で買った。
給与は業績と連動し、多いときで額面月25万円ほど。家賃のない寮住まいで「給料は十分」と感じていたが、自腹購入は多い月で20万円にのぼった。
有給休暇も自由に取れず、疲れ果てて退社した。いまはITの訓練をうけながら仕事を探す。分割払いで買ったジュエリーの支払いは月3万円。まだ1年以上、残っている。
同サロンを経営する「不二ビューティ」の代理人は「売り上げ目標は店舗にはあるが、個人には課していない。自腹購入はあるかもしれないが、会社として指示も推奨もしていない」と話している。
■叱責恐れ自腹購入
ホテルにエステティシャンを派遣していた仙台市のエステ会社で働いていた20代女性は、月50万~60万円のノルマが課せられていた。達成すれば1万円の手当がでるが、「それより恐怖心で仕事をしていた」
ホテルの宿泊客が少ない平日は、売り上げゼロのことも。翌日の朝礼で、売り上げが最も少ない従業員が社長から厳しく叱責(しっせき)され、泣き出す人もいた。こわくて、施術したことにして、1日3千円ほど自腹で払うことが何度もあった。
入社前に約束されていた社会保険や賞与、昇給はなし。社長は雇用調整助成金の不正受給の容疑で昨年逮捕された。女性は元同僚と、会社に残業代支払いなどを求めて提訴した。
茨城県内のエステ会社で今年6月から働き出した女性(44)は働き過ぎで体調を崩し、1カ月半で退職した。朝9時から夜10時までの勤務で、週2回、勤務後に深夜0時までの練習があった。残業代はなかった。
施術の前後には社長らに電話で指示を仰いでいた。「施術の度に数字を上げるためのチェックが入るのは、ストレスだった」(高橋末菜)
■「経営者は法律を守る意識必要」
美容のための痩身(そうしん)や脱毛などを行うエステサロンは全国に1万店ともいわれる。矢野経済研究所によると、施術だけでなく、化粧品などの物品販売に重点を置く事業者が増えている。
優良なエステ事業者を認定する認定NPO法人日本エステティック機構は9月、「たかの友梨」の優良認証を取り消した。高野友梨社長が労働組合に入った従業員に対し、「労働基準法を守ったら会社はつぶれる」など法令違反を認める発言をしたためだ。
今年3月には、客に対して4時間以上もしつこく勧誘したとして行政処分を受けた大手のTBCについても、認証を取り消した。
同機構の高橋博忠事務局長は「働きやすいサロンもたくさんある」としたうえで、「大手は広告費が大きく、従業員の給与も比較的高い。コストの回収のため、営業目標も高くなる。最低限のルールである法律を守る、という意識が経営者には必要だ」と話す。
(引用終了)
※なお、新聞記事にはたかの友梨ビューティクリニックで働いていたスタッフが実際に自腹購入したジュエリーやマッサージ器具の写真が掲載されています。
業界を変えるために何が必要か
記事で取り上げられている、たかの友梨ビューティクリニックでのノルマと自腹購入の厳しい実態は、私たちが相談の中で複数のスタッフの方からうかがった話と一致しています。また、ある相談者からは、店長であれば商品を一月に100万円近く自腹購入することもあるという話も聞いています。記事の中では不二ビューティの代理人が「売り上げ目標は店舗にはあるが、個人には課していない。自腹購入はあるかもしれないが、会社として指示も推奨もしていない」とコメントされていますが、会社としての指示ではなくとも、自腹購入があるということ自体が職場環境配慮義務に触れるおそれがあり、早急に会社として対応する必要があります。
もちろん、エステ会社の全てにこうしたノルマや自腹購入があるわけではありません。しかし、記事中で日本エステティック機構の高橋事務局長が指摘しているように、特に大手の中には、高い売り上げ目標のために自腹購入が蔓延している会社が残念ながら散見されます。このように、働くスタッフにもお客さんにも負担かけるノルマ達成競争を各社が行っている状況は、健全なエステ業界の発展を阻害しています。
この記事ではノルマに注目していますが、労働基準法を守らないで各社がサービスを競っている状況も、背景にある問題には共通するものがあります。最低限の基準を守らない会社ときちんとした基準を守っている会社の経営が競争した場合、前者が有利になりがちです。こうしたエステ業界の競争を、最低限のルールである法律を守ること、スタッフやお客さんに過度な負担をかけないことを前提としたものに変えていく必要があります。
エステ・ユニオンの取り組み①ノルマ・自腹購入について相談を受け付けています!
ノルマ達成のための自腹購入は本来断ることができます(自腹購入を強制すれば法律違反になります)。しかし、自腹購入しないと不利益な取り扱いをされないか不安、ノルマを達成しなかった場合のペナルティが重すぎて「自分から進んで」(実際には半ば強制されて)自腹購入をせざるを得ない、という方も多いのではないでしょうか。
エステ・ユニオンでは、そうした重過ぎるノルマや自腹購入の強制についての相談を受け付けています。
お電話やメールでいつでも相談を受け付けておりますが、不定期に行うホットラインの時間にかけていただければ、ユニオンのメンバーがすぐに電話を取れる体制を整えてご対応いたします。
〇「エステ業界 労働相談・転職相談ホットライン」
9/26(日)20~24時(相談最終受付:24時)
TEL:0120-987-215
※通話・相談は無料、秘密厳守です。

エステ・ユニオンの取り組み②ユニオンがエステ業界内の転職をサポートします!

ノルマの問題はそれぞれの会社に改善していただく必要がある問題です。とはいえ、スタッフの中には、今の職場のノルマがきつすぎるため、今の会社の改善を待つより、他の会社に転職したいという希望を持っている方も多くいます。また、残業代がちゃんと出るところで働きたい、有給休暇など、休みが取れるところで働きたい、子どもが生まれてからも働き続けたいので、出産・育児休暇がきちんと取れるところに就職したいという理由から転職を希望される人も多いのではないでしょうか。
そこで、以下の通りユニオンによる転職支援のセミナーを開催します!
〇「エステ業界 就職・転職支援セミナー」
日時:11月6日(木)14時~16時半 (13:30開場)
※詳細なプログラムは決まり次第ブログに追記します。
場所:東京ウィメンズプラザ(表参道駅徒歩7分、渋谷駅12分)第一会議室
主催:エステ・ユニオン(ブラック企業対策ユニオン・エステ支部)
講師:常見陽平氏
エステ業界関係者 *打診中
参加費:無料
予約:不要 (人数の把握の関係から、参加の意思をお伝えいただけると助かります。)
お問い合わせ:(電話)022-796-3894、(メール)info@esthe-union.com
当日は、求人票の見分け方や転職の際に気をつけたいポイントのレクチャーを通じて、専門家がサポートします。また、エステ業界や関連産業の会社による簡単な会社説明も予定しています!
(エステ・ユニオンは、労働法に即した良好な職場環境で働かせてくれることを約束していただける企業さまを、随時募集しています。今のところは主に関東エリアと宮城県エリアが対象となります。電話やメール等でまずはお気軽にお問い合わせください。)
エステ・ユニオンは今後もエステ業界全体の改善にさまざまな方法で取り組んでいきます。ぜひお気軽にご相談ください!

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