シンポジウム実施報告:9/23「ブラック企業時代の”マタハラ”を考える 女性労働の現状と課題」

去る9月23日(火)、エステユニオンは東京都内にて「ブラック企業時代の”マタハラ”を考える 女性労働の現状と課題」と題したシンポジウムを開催しました。
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、働く女性が妊娠•出産を理由として退職を促されたり、職場で嫌がらせを受けたりする問題です。私たちエステ•ユニオンにも、マタハラの相談が寄せられています。たとえば、妊娠を会社に伝えたところ、産後フルタイムの正社員で復帰することを条件として提示されたため、退職を余儀なくされたという相談です。
これは、何もエステ業界に限った問題ではないようです。連合非正規センターが2013年に行った調査によれば、マタハラの被害にあった女性は調査対象者の25.6%、そのうち相談できずに泣き寝入りした人は45.7%にも上るそうです。ここからは、マタハラは社会に広がっている問題であることが分かります。さらに、今年9月にマタハラによる降格を争った訴訟の結審があり、メディアで一斉に報じられるなど社会の注目も増しています。
このように、マタハラ問題への社会的な認知度が高まりつつある状況で、マタハラをどのように理解し、いかに取り組むべきかを考える機会を設けるべく、シンポジウムを行いました。
当日は、約60人の方に来訪していただきました。シンポジウムは、前半に研究者や現場の団体から個別報告を行い、後半は前半の報告者の方々がパネルディスカッションを行うという構成で進行しました。
前半の内容をご紹介すると、初めに杉浦浩美さん(立教大学社会福祉研究所特任研究員)よりご報告いただきました。杉浦さんは、2001年からマタニティハラスメントを研究し、著書『働く女性とマタニティ・ハラスメント』(大月書店、2009年)で山川菊栄賞を受賞されています。マタハラの類型と特徴をお話しいただき、その上でマタハラが起きる背景として「ケアレスマン・モデル」を労働者の標準像とする日本企業の労務管理があるとのご指摘がありました。ケアレスマン•モデルとは、①家事•育児などのケアワークをすべて女性にまかせ、かつ、②自身の身体ケアをおざなりにせざるを得ないような働き方です。
続いて、竹信三恵子さん(和光大学現代人間学部教授)のお話に移りました。竹信さんは、長年労働問題についての取材・執筆を続け、近年では『家事労働ハラスメント』(岩波新書、2013年)などを著されています。竹信さんからは、女性活用失敗型、使い捨て型、などのマタハラの類型が示され、それを男女雇用機会均等法や日本型雇用の問題点との関係から整理していただきました。
その後、「マタハラNet」代表の小酒部さやかさんより、マタハラ被害の実態をご報告いただきました。小酒部さん自身、妊娠中に無理な勤務を続けて流産を経験、会社に勤務状況の改善を訴えたところ退職を促されるという被害に遭われています。さらに、他の被害例として、子どもを保育園に預け復帰しようとしたところ「社長の気が変わった」と解雇されたケースなどをご紹介いただきました。
 
最後に、エステ・ユニオンからも、相談事例をお伝えしました。
後半は、進行役として『ブラック企業』(文春新書、2012年)等の著書のある今野晴貴さんを迎え、各報告者が討論を行いました。議論の中で、日本型雇用において「昔からあった」問題としてのマタハラと、近年深刻化する「ブラック企業」の問題としてのマタハラの二つが存在するとの認識が示されました。それを踏まえ、マタハラに対して今後どのような社会的な取り組みが必要なのか各登壇者から意見が出され、活況のうちにシンポジウムは幕を閉じました。
シンポジウムの様子は、東京新聞でも報じられています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

コメント

お名前 *

ウェブサイトURL