組合員が「たかの友梨」に対して、マタハラをめぐって東京地方裁判所へ提訴しました

本日10月29日、たかの友梨ビューティクリニックで10年近く正社員として働いた女性が、マタハラ被害の慰謝料と未払いの残業代を求めて裁判を起こしました。会社に妊娠を伝えたところ、虚偽の説明により退職を迫られ、切迫早産に至った事件です。この裁判は、エステ・ユニオンと弁護団が支援しています。本記事では、今回の訴訟の経緯を紹介したいと思います。
・長時間労働で休みが取れない職場環境
女性は、エステティシャンの正社員として、たかの友梨ビューティクリニックに10年近く勤め、ベテランとして後輩の指導をすることもありました。平均して1日13時間という長時間勤務を行い、残業は月80時間程度、有給休暇は働いてから一度も取得したことがありませんでした。
・妊娠したにもかかわらず時短勤務や負担の軽い業務への変更をさせてもらえない
そのような状況で、2013年12月に妊娠が判明します。女性が勤務時間の短縮やフロント業務などの軽易な作業への変更を会社に求めたところ、妊娠5ヶ月 になる4月から1年だけ産休を取得するか退職するかのいずれかを選択するように言われました(子どもが1歳になる前に復職するよう命じるのは育児・介護休 業法に違反します)。さらに会社は、必ず今までと同じ労働時間で復職しなければならない、と虚偽の説明を行いました。つまり、復職したらすぐに20時過ぎまで仕事をしなければならないということです。女性は、子どもが1歳に満たない時点で復職することへの不安や、残業ありきの働き方と子育てとの両立の難しさから、やむをえず退職を申し出ました。
・エステ・ユニオンへ相談
しかし、女性は多数の顧客を担当していること、収入を失うと経済的に困窮してしまうことなどから、この職場で働き続けたいという思いを強く持っていました。
そこで、女性はエステ・ユニオンに相談して、会社の説明が法律と異なることを知り、退職の撤回・産休取得・産休後の短時間勤務について改めて交渉することを決意しました。
交渉の結果、会社側は退職の撤回と産休の取得を認めました。しかし、以下のような条件をつきつけたのです。
・「1年後に必ず復帰する」という誓約書を書かないと産休が取得できない
会社は産休取得に際して、「必ず1年後に正社員として復帰する」誓約書を彼女に書かせました。それだけではなく、子供が熱を出したときの対応や託児の見込みなどについても書面で提出するように言われ、子育てによる影響を職場に持ち込まないような意思と条件を示すことを求められました。女性は、誓約書を書かされた時は、なぜこんなことを書かないといけないのだろうと思い、プレッシャーを感じました。時短勤務については、全く具体的な対応を示されず、「仮に認められたとしても勤務場所は選べない」旨だけを伝えられました。
その後産休に入るまで、会社からは「無理しなくていい」などの言葉をかけられただけで、人員補充などの具体的なサポートはまったくありませんでした。そのため5月中も9時~22時半位まで働き、休職直前になっても、休憩時間はまったくないか、食事を摂る15分程度の時間が与えられるだけでした。
その結果、女性は切迫早産になってしまいました。その後入院を経て無事に出産した女性は、現在産休中ですが、「会社から嘘の情報を伝えられ一度退職を選んでしまった」こと、「出産直前なのに時短措置をとってくれなかった」ことなどから、復職してから子育てと仕事を両立できるのか、不安を感じています。
法律では、労働者から産前産後の軽易な作業への異動を請求された場合、会社は応じる義務があるとされています。また、産休の取得に際して、これまでと同じ長時間労働を条件づけることは違法となります。こうした経緯から、女性は今回裁判に踏み切りました。
・長時間労働で休みが取れない職場環境自体が「広義のマタハラ」
このような、日常的な長時間勤務がある職場では、産後も働き続けることは難しいと感じ、自ら退職を申し出る女性も少なくありません。それらは一見「自発的」に選んでいるように見えても、マタハラであるといえるでしょう。今回の事件は、育休や産休が十分に取れないことだけではなく、長時間労働や休憩が取れないなどの過酷な労働環境それ自体が、広い意味でのマタハラとなりえることを示しています。
・「産休育休を取って安心して働き続けられる会社になってほしい」
10月29日の記者会見で、原告女性は、「これから働く人や、今働いている人、産休をとる人のため、会社が変わってほしいです。若い女性が中心の会社で、従業員みんなが過重労働がなく、産休育休を取って安心して働き続けられる会社になってほしいです。『100年企業』を目指す会社のためにも現状を理解し改善していただきたく、今回の裁判を起こすに至りました」とのメッセージを発表しました。
私たちは、今回の裁判支援を通じて、原告の女性の受けた身体的・精神的な苦痛について責任を問うことはもちろん、子どもが生まれた後も働き続けたいと願う女性がマタハラの被害を受けることがない環境を作るための取り組みを継続して行っていきます。
〇エステ・ユニオンでは、マタハラに関するご相談、情報提供を受け付けています。
・妊娠したことを店長に伝えたところ、退職するよう言われてしまった。
・育休を取得したところ、人事担当者から執拗にパート雇用への転換を勧められるようになった
・産休・育休をとっても良いが、(法律上できるはずの)時短勤務は無理だと説明された
このようなマタハラでお困りの方は、エステ・ユニオンにご相談ください。また、直接嫌がらせをされたわけではなくても、今の働き方・労働時間では、妊娠・出産後も働き続けるのは無理ではないかと不安になったり、退職を願い出たりしたという方のご相談や、過去にこのような経験をしたという情報提供も受け付けています。
ご相談・情報提供は下記の連絡先までお気軽にお寄せください。相談は無料です。ご相談いただいた方の個人情報は、厳守いたします。

組合員が「たかの友梨」に対して、マタハラをめぐって東京地方裁判所へ提訴しました への1件のコメント

  1. 元大手労働組合委員長

    ブラック企業対策ユニオンとは、どこの連合会に所属しているのですかね?
    県協議会なのか、単組とし産業別連合会なのかいまいち分かりません。
    応援はしていますが、相談に乗るだけで、結局は個人任せの状態のようですね。
    「組合員が・・・」とのくだりがありますけど、新聞には労組のことも書かれていませんし、組合員ではなく従業員と書かれています。
    これが意味するのは、労働組合として社会的に認められていないのでは?
    私が知る限り、ブラック企業対策ユニオンと言う名自体が、正式な連合の名簿で見かけたことがありません。
    ブラック労働組合にならないように、もっと会社側に対して介入しなければいけないのでは?
    正直、期待していただけに残念です。

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